工房 藍の館の藍は、阿波(徳島県)で600年以上続いている伝統の方法で作られた蒅(すくも)
阿波藍を100%使用しています。
蒅法とは、天然染料である藍染めを、
四季のある日本で一年中染められるように編み出された、
藍の葉を堆肥状に醗酵させ中の色素を凝縮保存させるという世界でも珍しい方法です。
藍は、タデ科 イヌタデ属の一年草で、原産国は中国・インドシナ半島といわれています。日本には6世紀以前に伝わってきました。赤い花の咲く「千本」・白い花の咲く「小上粉」の2種類があります。この蓼藍を徳島の新居製藍所などで、栽培から蒅にしていただき使用しています。
藍の色素を持つ植物は100種以上あり、世界中に分布しています。
今の主流はインドアイで、色素量が多く比較的染色しやすいのが特徴です。
そのため、世界中に広まり、他の藍染産業が衰退してきています。
マメ科
世界中で使用されています。
キツネノマゴ科
沖縄で使用されています。
アブラナ科
ヨーロッパで使用されていましたが、今は衰退傾向にあります。
アブラナ科
ヨーロッパや中国北部で使用されています。(北海道のアイヌの藍染に使用)
トウダイグサ科
日本古代の染料とされています。インディゴ成分が含まれておらず、青色ではなく緑色です。
徳島で作られた藍(蒅)の事を阿波藍といい、江戸時代から上質の藍といわれていました。阿波藍の生産量は、1903年の栽培ピーク時15000haの藍畑から1966年2haまで減少しており、近年は少し戻り20ha弱になっています。俵数では700弱といわれています。この阿波藍を現在は5軒の藍師により作られ、全国の染師に送られています。
蒅は、藍師により作られます。3月ごろ種子をまき、6月から梅雨明けにかけて1番刈り、この後2番刈り3番刈りをします。刈り取ったその日のうちに細かく刻み乾燥させ、大型の扇風機で吹き飛ばし、色素の多い葉と茎を選別します。葉の部分を頭巾に入れ保管します。
9月ごろ藍を寝床(葉を醗酵させる土間の部屋)に山積みにし、蒅づくりが始まります。1週間ごとに水を打ち山を崩しては積み上げ、切り返しを繰り返しムラなく醗酵させます。12月まで約100日繰り返します。醗酵の時はアンモニア臭がきつく目が痛くなったり、温度は70°ぐらいまで上がるためかなりの重労働になります。気温が下がり寒い日は風邪をひかさないように、筵の布団を藍に着せるなど子育てをするように藍師の経験と感覚で良い蒅が作られます。
一年がかりでこの様な大変な工程を経て、出来上がった蒅はかますに入れられ、12月の末から2月頃にかけて私たちに送られてきます。
(蒅作りでの現代の名工がおられる、新居製藍所と佐藤阿波藍製造所の蒅を使っています)
天然灰汁醗酵建で染める事を「本藍染め」といいます。本藍染は、葉の中にあるインディゴで染めます。染色をするには液体にする必要があるのですが、インディゴは水には溶けません。そこで字の通り「醗酵」をさせることにより、液体にすることができます。水に溶けたインディゴは皆さんが思われている青色ではなく、褐色をしています。これを布に付け酸化させる事で藍色に発色させる事ができます。
この様に藍染めは、還元と酸化という化学反応を使った染色になります。本藍染めは、醗酵している状態でないと染色ができないため、生きている染料になります。
(この事から、人類最古の化学反応を使った染色と言われたりしています。)
使用する材料は、蒅・灰汁・貝灰・ふすま・日本酒のみで、全て天然の物しか使用しません。
藍甕の中に蒅を入れ灰汁(木灰に熱湯を加えてできた上澄み液)半分に浸します。その中に、栄養分であるふすま(小麦の外皮)と貝灰をいれます。
栄養と醗酵促進のため日本酒を入れてかき混ぜ醗酵してくるのを待ちます。表面の色が変わり醗酵が始まると貝灰と灰汁で調整し甕一杯まで灰汁を足し、表面に綺麗な「藍の華」が咲いたら完成です。
順調に行けば、7日から10日で仕上がります。
毎回全ての条件が異なるため、それぞれを入れる分量やタイミングは経験と五感で判断するため、一回一回緊張感を持って作業をします。
この様に、「天然灰汁醗酵建 本藍染め」は、お酒造りやお醤油造りと同じ様な作業をする事でやっと染色する事ができます。
※天然灰汁醗酵建はそれぞれの工房により、入れる藍の食事などは異なります。天然な物を使っている限り明確な決まりはありません。